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ルルオンザルーフ
¥1,760
『ルルオンザルーフ』 よしだるみ 著 1,600円+税 B6判変型(171×120mm) 並製 224ページ ISBN978-4-909819-13-0 ★★『ルルオンザルーフ』お買い上げのお客さまへ★★ ★★よしだるみクレヨン画ポストカードをプレゼント★★ ★★★当ショップだけの特典です★★★ 《夜空はうんと広くて、硝子のかけらをばらまいたような細かな星々がいっぱいに散らばっていました。星がろうそくの炎のようにチラチラ揺れるのが、不思議でした。 「月が眩しいね」 物語で動物が集会を開いたりするのはきっとこんな夜だわ、と思いました。 ふたりで首が痛くなるほど見上げていました。鈴虫がリーリー鳴いていました。》 (「冬が来てしまった」より) * 絵本作家よしだるみ、初のエッセイ集! どうぶつのかぞく絵本シリーズ『いつかはぼくも』『わたしはいつも』『いつもとなりで』(国土社)、月刊絵本かがくのとも『あめあがりのしゃぼんだま』(福音館書店)など、色鉛筆やクレヨンを駆使した優しい画風で人気上昇中のよしだるみ。 創作絵本や挿画の仕事を多数こなす一方、中国武術講師の顔ももつ。 《ずっとどこか、急いでいました。一回りちょっと年上の主人に、少しでも追いつきたくて。》(「あとがき」より) * 上にあるように本書、エッセイ集『ルルオンザルーフ』の著者よしだるみさんは絵本作家として活躍中です。主に色鉛筆やクレヨンを使った優しい画風が特徴。「どうぶつかぞく絵本シリーズ」をご存じの読者にはおなじみですね。普段からしょっちゅう、動物園にスケッチに行かれているそうです。 クレヨンで描いた風景画や肖像画は時に写真を超えてリアルです。よしだるみさんの個展や原画展はけっして逃さずぜひ!観に行ってください! * 巻末には気鋭の映画監督・藤井道人(『新聞記者』『余命10年』)による解説「姉・よしだるみのこと」を収録。 《姉と僕は三つ離れている。僕は父に倣って剣道に打ち込み、姉は絵画と武術に精を出していた。姉は自分に厳しく人にも厳しいというタイプで、仲は良かったけれど子どもの頃は喧嘩もよくした(僕は典型的な人に甘く自分にも甘いタイプだった)。》 《姉は、ピアノも上手だった。幼少期、まだ僕に芸術の才があると誤解していた両親は僕にヴァイオリンを習わせた。親戚を集めてデュエットのようなものを強いられたこともある。心底嫌だった。自分の奏でるおぞましい「ギコギコ」という音色に我ながら辟易していた。》 《人生に優劣などないと思ってはいるが、このようにいくつか述べるだけでも僕と姉には雲泥の差があり、そして僕はわかりやすくどんどんグレていき、姉との交流も少なくなっていった。》(藤井道人「姉・よしだるみのこと」より) 藤井道人プロフィール: 1986年東京都生まれ。 映画監督、脚本家、映像作家。日本大学芸術学部映画学科卒業。大学卒業後、2010年に映像集団「BABEL LABEL」を設立。伊坂幸太郎原作「オー!ファーザー」でデビュー。 2019年に公開された映画「新聞記者」は、日本アカデミー賞最優秀賞三部門含む六部門受賞をはじめ、映画賞を多数受賞。ほか、映画「宇宙で一番あかるい屋根」「余命10年」、ドラマ「アバランチ」などを手がける。 * 絵本作家よしだるみさんと映画監督藤井道人さんは実の姉弟。藤井さんは、巻末への寄稿についてたいへん快く承諾してくださいました。ちょっぴりユーモアをにじませたエッセイは、よしだるみさんの幼少期や結婚したばかりの頃などが窺える内容となっています。 * もくじ 1 今日は、マグカップで飲むんだよ ミニチュア太陽とお月さま おしりがつめたい。 あるものとないもの 手当て 移住記念日 本 炭酸ジュース 晴れのち頭痛……そして日常 スプーン 広告チラシ トレンディードラマ いつものリズム 夢のようなカレー 冬が来てしまった 高い所 2 きれいだね ふたり クリスマスのはなし 小鳥 一番欲しいもの 久しぶりの散歩 マジック おそなえ 一日の過ごしかた 私のなかの小さな森 簡素なしくみ ぐにゃぐにゃ 雪やどり カード 甘いジンジャーシロップ 3 また四時だって思うんだよ 優しいストロベリーアイスクリーム 雪 恐竜のタマゴの町で なんということでしょう! 六月の雪 ネズミ 星の輪郭 夢のような桜散歩 春の色 虹 エアトランプ 立ちつくすロバ 最後のいちご ルル オン ザ ルーフ 色鉛筆削り あとがき 姉・よしだるみのこと 藤井道人 * 装丁およびカバー写真:堀内仁美(Horiuchi Design) * 著者プロフィール よしだるみ(吉田瑠美) 1983年東京都生まれ。 絵本作家、画家、中国武術講師。青山学院女子短期大学芸術学科卒業。幼少期を米国・ニューヨークで過ごす。1994年に中国武術に出会い、吉田博に師事する。 2012年京都に移住したのを機に絵を描き始める。絵本の仕事に、『はじめてのほんやさん』(垣内出版)、『いつかはぼくも』をはじめとする『よしだるみのどうぶつのかぞく絵本シリーズ』(全三巻/国土社)、『あめあがりのしゃぼんだま』(福音館書店)などがある。
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揺れて歩く ある夫婦の一六六日
¥2,420
著者 清水哲男 B5判ヨコ変型(182×210mm、厚さ17mm) 並製、192ページ 定価:本体2,200円+税 ISBN 978-4-909819-08-6 C0072 2020年4月15日初版第一刷発行 「がんかて笑(わろ)て死ねるんや」(本文より) 末期がんを宣告された父は、何もせずに死を待つという道を選んだ。もう、充分生きたと言って。著者は、父親に残された時間をつぶさに記録しようと決意する。市井の片隅で生きる無名の人間のひとりとしての父の最期を見届け、その父を最後まで支えた母の生きざまをも記録することで、生きる意味とは何かを自問する。両親の生活を接写し、言葉を書きとめてまとめた、ごくプライベートな写真文集でありながら、結果的に、「死をめぐる人々のありのままの姿」を普遍的に描いた一冊となった。 〈目次〉揺れて歩く ある夫婦の一六六日 揺れて歩く 日々訥々 宙ぶらりんの会話 生活の規模 いくつになっても主婦は主婦 宣告の日 がんかて笑て死ねるんや 父の誕生日 不在の予定 終の七日 惜別 日々訥々 取り残されて 錆びた刃先 あとがきにかえて ひとりで歩く * 〈出版社エディション・エフより〉 この『揺れて歩く ある夫婦の一六六日』の出版にあたっては、著者が活動拠点としている鹿児島市で出版支援プロジェクトが立ち上がり、独自のクラウドファンディングによって多くのかたがたからの支援金が集まりました。ご支援くださったみなさまと、プロジェクトを遂行くださった著者ならびに著者の応援団のみなさんに心から御礼申し上げます。 原稿と写真を著者から受け取った当初は、「父の闘病と死」の事実に印象が支配されていましたが、編集制作の過程で幾度も読み直すうちに、これは紛れもなく、夫から妻へ妻から夫への恋文であり、父と息子そして母と息子それぞれの愛情往復書簡であると確信するに至りました。口下手な三者が最愛の人と過ごした濃密な時間の、写真と文章による記録。しかし単なる記録にとどまらない、読み手に自身の家族関係や生と死の意味を再考させる、モノトーンの絵巻物であるともいえます。ひとつの家族の濃密な時間を書物として封緘し、読者へ届けることの喜びを感じております。 なお、刊行予定時期に重なるように、新型コロナウイルスの感染拡大が全国に波及し、出版にともなうさまざまな企画を取り止めるに至りましたことを併せて記しておきます。 以下は、一連のイベント中止に際しての著者サイドからのステートメントです。エディション・エフも名を連ねてコメントを出しました。 ********************************* 【ご案内】 新型コロナウィルス感染拡大により、「揺れて歩く」上梓に関連する以下のイベントを中止または延期とさせていただきます。 ①4月14日 タカダワタリズム2020+出版披露の会@イパネマを中止に ②4月18日〜21日 清水哲男写真展「揺れて歩く」@スペースMuを状況改善までの延期に ③4月18日 金森幸介ライブ@スペースMuを中止に ④4月19日 大阪の仲間たちライブ@スペースMuを中止に それぞれいたします。 この件に関して清水哲男とエディション・エフ、「揺れて歩く」出版応援団事務局は、それぞれ以下のコメントを発表しました。 ============ 清水哲男の出版と写真展等の活動を 応援してくださるみなさまへ ============ 新型コロナウィルス感染拡大下のぼくの活動について 今この国では日に日に新型コロナウィルスの感染が拡大し、鹿児島でも感染者が確認されました。その一方で、メディアを通じて流れてくる情報をどこまで信じていいのかもわかりません。その結果、ぼくは東京や鹿児島、果てはこの国の中で起こりつつあることをどう受け止めていいのかわからないというのが正直な気持ちです。多くの人が、混沌の中で目に見えない恐怖に対する不安に身を縮めて、それでも生きなきゃと仕事と暮らしに向き合っているのだと思います。 そんな中、大勢の皆さんのご支援をいただき、ぼくの新刊「揺れて歩く」が刊行されます。そうしてその普及にあわせて、みんなで「生きること」を真ん中において、様々な議論を深め考えるプロジェクトを進める取り組みがはじまろうとしています。その中核のひとつとしていくつかのイベントを考えていました。そこに新型コロナウィルス感染拡大という状況が重なりました。 国は感染拡大防止策として不要不急の外出自粛を求め、専門家会議は密閉空間、密集場所、密接場所の「三密」を避けるようにとの提言をしています。しかし、鹿児島ではいまだ不要不急の外出の自粛を求められることはありません。当初ぼくは、新型コロナウィルスに対する闘いは、自分自身で徹底した感染防止策を実行した上で、ルーティンを淡々と続けることだと考えていました。すべてを自粛するのではなく、たとえば客足が落ちて困っているお店を順繰り回り飲み続けたり、集会や、イベント、ライブにも顔を出したり、公共交通機関もタクシーも普通に使ったりと。でないと、新型コロナウィルスに負けてしまうし、無責任で不誠実な国、厚生労働省をはじめとする行政システムの言いなりになってしまうことになる。それはぼくがこれまでカウンターカルチャーという周辺分野で生きてきたということにも関わることでした。 確かに現状起こりつつある検査体制の矛盾、予想される医師、病床数の不足、保健所機能の脆弱性などは、従来の政策の行き着くところとして推測されていたことで、それが新型コロナウィルスによって暴かれた側面はあると思います。そのことをおいて、ぼくたちに自粛を求め、果てに商品券をばら撒き、無利子とはいえ返さなければならない融資でお茶を濁し経済対策だと豪語する政府・行政は厳しく批判されなければならないと思います。 しかし今、ほんとうの敵は政府・行政ではありません。真の敵は新型コロナウィルスなのです。この敵を封じ込めるために、打ち勝つために、ぼく自身ができることを考えてみました。その結果、新刊上梓にあわせて予定していたいくつかのイベントを延期または中止しよう、あるいは実施の方法を変えようと思います。 ひとつは4月14日に予定していた鹿児島市東千石町イパネマでのタカダワタリズムと新刊披露の会を中止に、さらに4月18日から21日までの大阪市桃谷スペースMuでの写真展「揺れて歩く」と関連するライブを状況が落ち着くまでの延期にしたいと考えています。また、新刊披露の会は、SNSを活用した形での開催を目指します。 政府・行政に対抗する、批判することだけを目的にイベントを開催することで、感染のリスクをつくり出し、もし感染源となる場所をつくり出してしまうなら、それこそが非常事態宣言という制限と強制の社会を生み出す口実になるばかりか、真の敵新型コロナウィルスを利することになります。それだけはなんとしても避けたいと思います。 そもそもぼくは、生きて死ぬことをもっと自分の頭で考えようよという意味を込めて「揺れて歩く」を書きました。今がまさにその時だと思っています。そうして考えた結果、このような結論となりました。 しかし、どのイベントも遠来していただくゲストや、会場を提供していただく方の事情もあります。関わっていただく大勢の方の事情も含めて考えた苦渋の決断だとご理解ください。 みなさん、なにが大切か、なにをなすべきか、どう生きるか、そんなことをじっくり考えて行動しましょう。そうして新型コロナウィルスに打ち勝った時、あらためて集い楽しい時間を共有しましょう! 清水哲男事務所 清水哲男 ===== 皆さんとのつながりを信じて 新型コロナウイルスが猛威を振るうなか、清水さんとじっくり対話を重ね、今回の決断にいたりました。いま社会のあらゆるつながりが試されています。私は、清水さんと、清水さんを応援するすべての皆さんとのつながりを信じて、今回のイベント延期を共に決断させていただきました。皆様、ご理解いただけますと幸いです。 「揺れて歩く」出版応援団事務局長 永山由高 ===== あなたの愛する人の時間のために、今は家に留まりましょう 新型コロナウイルスなどというものの到来は、飽くなき環境破壊を続ける人間の傲慢のひとつの帰結でしょう。私たちは、いきすぎた開発、いきすぎた実験、いきすぎた生産、果てはいきすぎた殺戮を繰り返しては自然界から大きなしっぺ返しを食らう、学習しない生き物です。とうとう目には見えないウイルスに足元をすくわれ、瀕死の状態です。とはいえ、それでも、長い時間をかけてこのウイルスを克服する日が訪れるに違いありません。ただし、そのあいだにはきっと大きな大きな幾万の犠牲を払わなければならないでしょう。幾千万もの人々が、大切な存在を突然奪われる悲しみと対峙しなければならないのです。 エディション・エフの新刊、清水哲男著『揺れて歩く ある夫婦の一六六日』は、余命宣告を受けた父と寄り添う母の様子を撮影し続けた息子による記録です。約五か月半といえば、ひとつの家族の長い時間の中のほんのひとときに過ぎませんが、「いのちの期限」を切られた三者が互いにその生きざまを見つめ認め合う様子が凝縮されており、モノクロの写真と文章から伝わります。 本書の刊行に合わせて写真展、また著者を囲んでのトークイベント等が企画されていましたが、当面、それらいっさいが中止または延期されることになりました。ですが本書は予定どおり刊行されます。ぜひ、書籍を手にしてお読みいただきたいと切に願います。 人は、いつか必ず死にます。そして、思いどおりには死ねないものです。だからせめて、準備の時間がほしいのです。突然足元をすくわれて倒され、苦しめられて死にたくなんか、ありません。あなた自身と、あなたの愛する人の時間のために、今は家に留まりましょう。本屋さんにだけ、出かけてください。『揺れて歩く ある夫婦の一六六日』を買うために。 エディション・エフ代表 岡本千津 ************************************ 【著者】清水哲男(しみず・てつお) 1954年京都市生まれ。同志社大学文学部哲学及び倫理学科専攻卒業。 卒業後、国内はもとより世界各地を放浪。1980年頃より執筆活動をはじめる。 常に野に在り、市井の人々の暮らし、労働の現場に入って日常をともにすることで得た実体験を頼りに思考し、書き続けている。2000年頃より表現の手法として写真撮影をはじめる。2014年より鹿児島、大阪、京都で写真展を開催する。1997年より鹿児島市在住。 『少年ジェットたちの路地』(1994年、風媒社)、『種子島へ』(2000年、再海社)、『死亡退院』(2004年、南日本新聞社)、『月がとっても青いから』(2012年、中央アート出版)など著書多数。
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月の家の人びと
¥1,870
『月の家の人びと』 砂岸あろ 著 1,700円+税 B6判変型(171×120mm) 並製 288ページ ISBN978-4-909819-10-9 《杏は鏡を持った手をのばし、いったん上に高くかかげてから、軽く深呼吸して中をのぞきこみました。 さっきよりも輝きを増したまるい月が、鏡の上のほうにうつっています。 その前に、瞳をきらきらと光らせ、かたくくちびるを結んでいる、一人の女性がうつっていました。》(第四章 月の鏡 より) * 物語を紡ぐ人、砂岸あろ――。 美しいもの、純粋な心、ちょっぴり不思議なできごと……。人が見失いがちなものたちにこだわりつづけ、物語を創りつづけてきた著者が、祖母と過ごした「月の家」の思い出を温めながら書き、時を経て幾重のてがかりをも加味して書き上げた長編。 《その家は、(中略)志賀直哉が住み、『山科の記憶』などを書いた家です。それから数年後、私の父方の祖父母一家がその家に移り住みました。》(著者による「あとがき」より) * 京都在住の漫画家、グレゴリ青山さんから帯に推薦文をいただきました! 物語を読んでいる間、ずっと 月の光に包まれている心地がしました。 美しい京都山科文学の誕生です。 ――――――― グレゴリ青山 グレゴリ青山さん:漫画家。京都在住。著作に『グレさんぽ~猫とかキモノとか京都とか~』(フラワーコミックススペシャル2020年)『京都深掘りさんぽ』(小学館文庫2017年)など多数。 * 目次 第一章 赤い傘 第二章 夜の犬 第三章 水の皮膚 第四章 月の鏡 第五章 風の靴 第六章 鬼の木 第七章 空の椅子 第八章 眠る絵 終 章 月のいる庭 * 著者プロフィール 砂岸(すなぎし)あろ 京都市生まれ、京都市在住。京都精華短期大学(当時)で美術を学び、1986年よりアトリエ・ウーフ絵画教室を主宰しながら、少女マンガ原作、児童文学、エッセイなどを書く。「海の方法」同人。著書に『駱駝はまだ眠っている』(かもがわ出版、2005年)、『ほおずきの夜』(白馬社、2007年)、『黄金色の風になって』(上下、講談社青い鳥文庫、2009年)、『せんをひく』(福音館書店こどものとも、2010年)などがある。
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京都ほんやら洞の猫
¥1,650
著者 甲斐扶佐義 A5判 144ページ 定価:本体1,500円+税 ISBN 978-4-909819-04-8 2019年3月15日初版第一刷発行 ここには郷愁以上のものがある 京都のカウンターカルチャーの拠点《ほんやら洞》全焼から4年。 ほんやら洞の店主で、美女や京都の市井の人々の撮影にかけては定評のある写真家が、焼け残されたプリントとネガの山から救出した猫写真の数々をまとめた。 (カバー裏表紙より) * 『京都ほんやら洞の猫』は、京都が誇る市井の写真家・甲斐扶佐義さんの猫写真集です。 エディション・エフから本書を世に出せることに、大きな喜びを感じています。甲斐さんの被写体となった猫たち、子どもたち、京都の人々、そして風景。制作中、幾度となく写真の数々とにらめっこしては、感慨にふけりました。 「ほんやら洞」は甲斐さんがシンガーソングライター岡林信康さんらとともにオープンした喫茶店。学生はもちろん内外の芸術家や知識人が出入りし、二階では読書会など文化的な催しが開かれ、さまざまな活動の拠点にもなっていました。猫が住みつくようになってからは子どもたちも集まり、甲斐さんは、そんなほんやら洞の日常を撮り続けてきたのでした。 ところが、ほんやら洞は不幸にも4年前、火事で焼失。店に保管してあった膨大な数のネガやプリント、そればかりか準備中の著書の草稿までもが失われました。いったいどれほどの失意が甲斐さんを襲ったでしょうか。想像するのは容易ではありません。 でも甲斐さんはけっしてへこたれず、焼け跡から写真を救出し続けました。諦めず、根気よく、救出し続けたのです。 今回、整理したなかから猫の写真を集めて編集し、エディション・エフから刊行する写真集としてまとめてくださいました。 装幀はLily Design & Photoの浜田佐智子さん。浜田さんはブックデザイナーであると同時に、写真家・甲斐さんの有能なアシスタントであり、自身も写真家として写真集を刊行しています。 * ここで取り上げた写真は大別すると、ひとつは70年代の数年間のほんやら洞とその周辺の写真であり、もうひとつは90年代に子どもとともに出会った街猫の写真だ。 前者では、猫と猫好きの仲間や客とのやり取りのシーンを撮ったものが多い。後者は、90年代から2000年にかけてはからずも始まった「美女との猫さがし」で撮った猫が中心だ。 (あとがきより) 【著者プロフィール】 甲斐扶佐義(かい・ふさよし) 1949年大分市生まれ。68年同志社大学政治学科入学即除籍。 72年ほんやら洞を岡林信康、中尾ハジメらとオープン。77年写真集『京都出町』を出版。78年米国で個展。90年代の10年間、京都新聞紙上にフォト&エッセイを連載。2001年以降欧州各地で個展。2009年京都美術文化賞、2014年仏ジャン・ラリヴィエール賞受賞。2013~14年毎日新聞関東版にフォト&エッセイを連載。2019年2月現在「月刊ふらんす」(白水社) にフォト&エッセイを連載中。
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ぬばたま
¥1,980
『ぬばたま』(歌集) 北夙川不可止 著 1,800円+税 A5判変形 並製 256ページ ISBN978-4-909819-09-3 《射干玉(ぬばたま)の黒き仔猫を「ぬばたま」と名づけて飼ひぬ七月のすゑ》 北夙川不可止(きたしゅくがわ・ふかし)は歌人でコラムニスト。 『ぬばたま』は作歌生活25年にして初めて上梓する歌集である。 作歌は膨大だが、2010~2018年に詠んだ歌のなかから 772首を厳選した。 著者の活動は幅広く、アートイベントの企画運営、また近代建築・景観の保全活動にも取り組んでおり、本書の収録短歌からは、その多岐にわたる活動が窺い知れる。 「ぬばたま」は、歌人がかつて飼っていた猫の名前である。 「猫と美少年をこよなく愛し、近代建築と美術と音楽を愛で、美しき建物が壊される不条理に怒り(中略)、吟行をする日々が 絵巻物のように繰り広げられる」 (寮美千子によるあとがき「永遠の幼子、伯爵」より) * 歌人・北夙川不可止の第一歌集、『ぬばたま』。帯の言葉には、歌人をよく知る作家・詩人の寮美千子さんが本書へ寄せた原稿からの一節を引いています。 歌人は猫との暮らしを詠み、少年との愛の戯れを詠み、文化的遺構の美しさを詠みます。 血糖値が跳ね上がり入院生活を余儀なくされた日々の歌などは、退屈を逆手にとって愉しもうとする歌人の心情がにじみ、とてもユーモラスです。 今も愛する猫たちと暮らす歌人ですが、「ぬばたま」は忘れ難き美しい猫だったと述懐しています。 * 東京のピカレスクギャラリーでは、 2020年6月13日(土)〜8月2日(日)のあいだ、 短歌と写真のコラボレーション展「叛亂の豫感(はんらんのよかん)」 が オンラインにて開催されました。北夙川氏の短歌と写真家・北沢美樹氏の美しい写真のコンビネーション。展覧会を記念した作品集「叛亂の豫感」がギャラリーの通販サイトで販売されています。そちらもぜひどうぞ! リンクをクリックすれば別ウインドウで開きます。⇩ https://picaresquejpn.com/work/hanran-no-yokan/ * 【著者】 北夙川不可止(きたしゅくがわ ふかし) 1964年兵庫県西宮市生まれ。同志社大学神学部中退。1994年に獄中で短歌を始め、所属結社は『アララギ』、『新アララギ』、『玲瓏』と移籍。近代建築や歴史的都市景観の保全に取り組み、著書に『東西名品 昭和モダン建築案内・新装版』(書肆侃侃房、2021年秋刊行)などがある。オープンリーゲイとしてBL短歌同人誌「共有結晶」創刊に参加。活動分野は多岐にわたり、各所で「伯爵」と呼ばれ親しまれている。
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装いせんとや 生まれけん 着物の戯れ じぶん流
¥1,980
『装いせんとや 生まれけん 着物の戯れ じぶん流』 蓮味 青(はすみ あおい)著 1,800円+税 A5判 並製 152ページ ISBN978-4-909819-12-3 《着物は過去の遺物では、ありません。もっと楽しくなるはずです。 この本が、貴方なりの着物のお洒落を見つける手助けになればとても嬉しく思います。》(「はじめに」より) * ちょっと知的で、洒落っ気とユーモアもたっぷり。 時にはもったいない精神と工夫で着こなす、和装のエスプリ満載。 そのまま真似てみたくなる着物との戯れ術。 《着物が日常着ではなくなった現代において敢えて着物を着ることは、普段と違う「装い」をすることでもあるのです。それはまた、生活を「遊び」「戯れる」ことにも繋がっていきます。 戦争や飢餓を知らずに育った幸運な世代の私達も、いま現在、数年前には想像もしなかった困難な状況の中で暮らしています。 そんな中でも着物で遊び、着物と戯れることでいにしえから綿々と伝えられてきた美しいものたちを思い出し、慈しみながら日々を過ごすことが出来ますように、と願いを込め ました。》(「あとがき」より) 「着物の戯れ」の達人が見せる「遊びかた」。和装コーディネートのヒントが満載! * 目次 第一章 能を着こなす 第二章 季節を着こなす 第三章 私のお気に入り あれこれ * 著者プロフィール 蓮味 青 (はすみ あおい) 着物と古典芸能をこよなく愛し、古裂、古民芸、骨董家具、古い器などを日常に生かす生活を模索しつつ、観世流謡曲仕舞、森田流能管、金春流太鼓、石井流大鼓の稽古をマイペースで続けている。週末のみ着物生活。京都市在住。
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Go to Togo 一着の服を旅してつくる
¥1,650
『Go to Togo 一着の服を旅してつくる』 ■■■烽火書房の本■■■ 著者 中須俊治 四六判 224ページ 定価 1,500円+税 ISBN 978-4-9911160-0-1 2020年4月30日 初版第一刷発行 【帯の言葉】 「誰も見たことのない景色を見に行こう」と ぼくはアフリカ大陸をめざした。 * 著者の中須俊治さんは1990年生まれ。現在は株式会社AFURIKA DOGSの社長としてアフリカから輸入した美しい布地を展示販売したり、オーダーメイドで服に仕立てたり、オリジナル柄の布地をアフリカと京都の職人をコラボレーションさせて開発したりしています。 彼がなぜこうしたビジネスを興したか、その道のりを書いたのがこの『Go To Togo』です。 この本、とても面白い造本になっています。外からの見た目はごく普通の四六判の書籍ですが、ページを開くと、「あれ? 乱丁?」とつい不審に思ってしまいます……。 以下、版元の烽火書房さんのHPからの引用です。 《「グローバル人材」の意味がわからず就職活動をやめて、アフリカ・トーゴのラジオ局に行ったことから、大きく動きだした人生。 トーゴで出会った友達との「みんなが笑って過ごせる世界をつくりたい」という約束を守るため、いったん就職後、独立起業。トーゴ布職人と京都の染色職人の技術をつなぎながら、見落とされてしまうたくさんの価値をつないで、新たな服づくりに挑戦する株式会社AFURIKA DOGS中須俊治の奮闘記。 文化も違えば言葉も違う1万3000キロ離れたトーゴへ行くことは、文字通り価値観が回転するような体験です。この書籍では「日本編=縦書き」「トーゴ編=横書き」で展開し、舞台が入れ替わるたびに書籍を180度回転させながら読み進めていく一冊です。》 * 2020年4月にこの本が発売された当時、世の中はコロナ禍に見舞われ、誰もが思うような行動をとれずにいました。ところが中須さんの以降の活躍は目を瞠るものがありました。すでに手許にあった、トーゴから持ち帰った布地や雑貨、アート作品などを積極的に展示販売していきました。もちろん、人の集まるイベントがことごとく中止になっていくなか、そうした機会を得ることは困難の極みでしたが、小さなチャンスを掬いとるようにものにして、「アフリカ」を見せてアピールしていきました。 今ではオフィスと直営店舗を構え、トーゴと京都に自社のための製品を製造・販売するスタッフを抱えています。 中須さんを知る人は、彼の明るさと腰の低さ、人を傾聴する姿勢を褒めたたえます。それは彼が金融マン時代に培った処世術かもしれないし、あるいは生来の美徳なのかもしれません。 『Go To Togo 一着の服を旅してつくる』は、タイトルどおり、中須さんが旅の途上にあり、ビジネスも緒に就いたばかりのところで締めくくられています。アフリカと日本にしっかり拠点を置き、新たな展開を模索し続ける中須さんの「その後、そして今」を読みたいものですよね! 【著者】 中須俊治 なかす としはる 1990年京都府生まれ。滋賀大学経済学部卒業。株式会社AFURIKA DOGS代表取締役社長、重彩プロデューサー。 大学在学中、就職活動に疑問を感じ、アフリカのトーゴ共和国を訪れ、現地のラジオ局にてジャーナリストとして番組制作に携わる。帰国し、卒業後は金融機関に入社、営業担当として勤務したのち、独立、起業。 「みんなが笑って過ごせる世界をつくる」ために日本とトーゴを往復し、築いた人脈を強固にしながら、両国の職人の技術をつないで自社製品の開発を進めている。トーゴから輸入した独特の模様のプリント布地は人気を博し、有力百貨店での展示販売を行うなど、アパレル業界に静かなる旋風を起こしつつある。
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京都の里山を駆けぬけて
¥1,980
『京都の里山を駆けぬけて アルキニスト/民族植物学者の哲学と軌跡』 ■■■英明企画編集の本■■■ 編著者 阪本寧男、物集女くらぶ 四六判 294ページ 定価 1,800円+税 ISBN 978-4-909151-80-3 2022年1月26日 発行 【帯の言葉】 孤高にして自由 そして天邪鬼な探究者 阪本寧男の魂の記録 【推薦文】 京都大学という密林(ジャングル)は、計り知れない知と行動力をそなえた人財の多様性中心である。人と植物との関わりを探究して世界を駆け巡ったフィールド研究者、阪本寧男の世界は、そのなかでもひときわ引き立ついぶし銀の輝きをはなっている。 ―――――山極寿一 第26代京都大学総長/ 総合地球環境学研究所所長 * 著者の阪本寧男氏は、民族植物学者とありますが、本書は阪本氏が子どもの頃に遊んだ里山の記憶を基点に、「発展」し「便利」になる暮らし、激しく姿を変えてゆく町、失われる里山の自然、戦争の爪痕……といった歴史的、経済的、文化的な側面にも言及しつつ、あちこちに生息していた動物、虫類、もちろん植物も、あらゆる生物についての調査を披露する報告書であるといえます。阪本氏は山科の生まれ。彼が生まれた山科と、現在の山科とではあまりにも風景が異なるそうです。 《ちょっと個人的なことを述べて恐縮であるが、そこがどんな場所であったかというと、標高約一八〇メートルのアカマツ林の典型的な里山であった。生活するのに必要な水はまさに、”水は天から貰い水”で、雨水だけが頼りであった。飲料水は雨水というわけにはいかず、地図の黒丸の左下に旭滝と書いてあるが、この小さな滝へ雨が降ろうが、雪が降ろうが、幼い子供の時から毎朝父と一緒に水汲みに行くことが、誰も絶対文句を言うことのできない日課であった。》(32~33ページ、2 私の「すいば」より) 昼間は停電し、夕方、外が薄暗くなると電気がきて灯りをつけることができる、といった記述もあり、現在では想像のつかないような、戦前の庶民の暮らしぶりが垣間見えます。 阪本氏はアメリカやフィリピンに渡航しての調査も行っています。 どこへ行っても、ひたすら歩いて採集し、調べています。 本書のタイトルには「駆けぬけて」とありますが、サブタイトルの「アルキニスト」とは、登山家をいう「アルピニスト」をもじった「アルキニスト=歩きにすと」なのだそうです。 カッコイイですね! * カバー袖、奥付に記載されている編著者情報です。 【著者】 阪本寧男 さかもと さだお 1930年京都市生まれ。1954年京都大学農学部農林生物学科卒業。1962年ミネソタ州立大学大学院修士課程修了、農学博士(京都大学)。国立遺伝学研究所研究員、京都大学農学部助教授、同教授、龍谷大学国際文化学部教授を歴任。民族植物学専攻。 【編者】 物集女くらぶ もずめ くらぶ 本書の編纂の結成されたゆるやかな集まり。
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水平線
¥1,320
著者 山川三多(やまかわさんた) A5判、104ページ 定価 1,200円+税 ISBN978-4-9908091-2-6 2016年6月30日初版第一刷発行 『昼のビール』に続く山川三多詩集第2弾! ◆書き下ろし詩編35編と「あとがき」を収録しました。 帯文は、「八十路の 清々しさに 背筋が 伸びる」。 年長者の発言には重み、含みがあります。背景には歳月という長い道のりがあります。山川三多は八十歳。詩篇の一行一行、一語一語、またひと文字ひと文字を目で追って読んでいくと、知らず背筋を伸ばし姿勢を正している自分に気づきます。 ◆表紙画・挿画は『昼のビール』と同じくナカライエイコが描きました。 ◆装幀は京都のデザインプロダクション、ウーム総合企画事務所の俊才デザイナー、岩永忠文が担当しました。 【書き下ろし詩集です】 『昼のビール』に好評を得て、再びエディション・エフから詩集を刊行することを念頭に、山川三多はいくつもの詩を書きました。幾度も、書き直しました。エディション・エフの編集室には、赤字や二重線でいっぱいになった原稿用紙が届きました。パソコンに打ち込んで、出力した詩篇の束は、さらに詩人と編集室を往復しました。 2015年に『昼のビール』が刊行された頃、山川三多は船旅に出ていました。海と空を見つめて過ごす幾日かのあいだに、多くのことを考えました。さまざまなことを考えました。旅の友と人生談義に花を咲かせました。船旅は非日常のようでいて、日常でもありました。発見にもあふれていましたけれど、人生のおさらいでもありました。 『水平線』の収録詩は、船旅のあいだ、または帰着後に書き綴られたものばかりです。八十路にして、「人生の第四コーナー」をまわるぞと意気込み、「やるべきことは山ほどある」と言い、「青春なんて/あとからいくらでも/つくり出せるのに」と老いる気配のない、山川三多です。 山は山にあらず 川は川にあらず などと悩んだこともあり ちっぽけもわるくはないと、 ちっぽけな自分がいます。 ——(「風」)
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昼のビール
¥1,320
『昼のビール』 山川三多詩集 著者 山川三多(やまかわさんた) A5判、88ページ 定価 1,296円(税込) ISBN978-4-9908091-0-2 2015年6月30日初版第一刷発行 『昼のビール』は、山川三多の29篇の詩を仏訳とともに編んだ詩集。 ◆著者の山川三多はビジネスマンとして多くの事業を手掛け、いち早くIT業界にも進出し現在のインターネットプロバイダ産業の基礎固めにも貢献した人物です。過去にはビジネス関連の著作も多数あります。学生時代に聴講した西脇順三郎はじめ内外の詩人に造詣が深く、一線を退いたあとは詩作に励んでいます。これまでに『ざまあみろ』等三冊の詩集(いずれも敬文舎)を上梓。 ◆仏訳を担当したのはナディア・ポルキャール。現在パリのソルボンヌ大学でフランス文化を教える傍ら、映画製作や小説の執筆を行うアーチスト。16年間京都に住んでいた経験を活かし、さまざまなジャンルで日仏翻訳を手がけています。 ◆挿絵を描いたナカライエイコは幻想的かつ温かみのある画風が特徴。『昼のビール』では自身のデザインオフィス名義で装幀も手がけました。