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「月映(つくはえ)」の三人 生と死をめぐる協働的創作活動
¥3,960
「月映(つくはえ)」の三人 生と死をめぐる協働的創作活動 橋本 真佐子 著 定価 3,600円+税 A5判 428ページ 上製 ISBN 978-4-909819-20-8 2025年3月31日 初版第一刷発行 三人の名は、田中恭吉、藤森静雄、恩地孝四郎。 大正初期に青春を生き、互いを伴友(とも)と呼び、 詩歌と版画の創作に挑んだ「青年画家」たちの足跡。 《三人はその強い絆のもとで、詩と版画の同人雑誌『月映』を生み出し、当時、まだ芸術的価値が定まっていない 創作版画という表現方法と文学の双方を武器に「自己」の内面世界を表現することに挑戦した。》 《『月映』の三人が注目すべき前衛的な作品を生み出すことができたのは、彼らが「群れ」となり、お互いを強く信頼し、 刺激しあいながら成長しあえる小集団であったからである。この「群れ」は同じ憧れや芸術的な関心を共有しつつ、 それらをおのおのに創造へと転じていく「青年画家」たちの間の固い絆に基づいていた。》(序章より) 著者の橋本真佐子さんは、大正時代初期に刊行されていた同人雑誌『月映』の存在を知り、『月映』の同人、田中恭吉・藤森静雄・恩地孝四郎の三人の足跡を追い求めます。すでに100年以上昔のこの国の、芸術と文学を愛し、自己の表現に挑み、生と死を問うた若者たちの青春を、『月映』から描き出します。渾身の博士論文書籍化。 《あの時の五月の和歌山の鮮やかな青葉と、爽やかというよりも眩しすぎるような太陽の光を思い出す。初めて田中恭吉の作品を見たときの衝撃と「とんでもないものを見てしまった」という思いは、私の杖となり鎖となった》(p.409 あとがきより) 目次 序章 第一章 東京美術学校と『月映』の「青年画家」たち はじめに 第一節 東京美術学校の入学と美術教育 第二節 田中恭吉たちと東京美術学校の生活― 美術学校教育への反発― 第三節 「青年画家」たちの日常 第四節 美術学校教育の外側― 憧れの「先輩」・川路柳虹とヒュウザン会の活動― 4-1 川路柳虹 4-2 ヒュウザン会 まとめ 第二章 「創作版画」の成立 はじめに 第一節 明治時代後半の印刷と各種版画をめぐる状況 第二節 「創作版画」のはじまり 2-1 「創作版画運動」のおこり 2-2 創作版画の嚆矢 山本鼎《漁夫》 2-3 同人雑誌『方寸』の活動とその特徴 2-4 西洋画家による創作版画― 南薫造と富本憲吉― 2-5 雑誌の表紙・挿絵と創作版画―『假面』の長谷川潔と永瀬義郎─ まとめ 第三章 竹久夢二と『月映』の三人 はじめに 第一節 竹久夢二と『夢二画集』 第二節 竹久夢二と『月映』同人との交流 第三節 竹久夢二と追随者たちの出版活動 まとめ 第四章 『月映』前史― 回覧雑誌『密室』の「煩悶青年」たち― はじめに 第一節 「煩悶青年」という装置と先行研究 第二節 煩悶の公開性と秘密性― 煩悶青年のバイブル・阿部次郎『三太郎の日記』― 第三節 回覧雑誌『密室』第一号から第三号における煩悶の表現 第四節 回覧雑誌『密室』第五号以降における煩悶の過熱 第五節 「自己」を描く 第六節 回覧雑誌『密室』における集合的煩悶の意味 まとめ 第五章 『月映』誕生― 私輯『月映』と「まどひ」のなかの試行錯誤― はじめに 第一節 香山小鳥と創作版画 第二節 私輯『月映』の経緯と特徴 2-1 私輯『月映』の経緯 2-2 私輯『月映』の特徴 第三節 「まどひ」の版画制作 3-1 集団的試行錯誤と友情の発展 3-2 「自己の表現」と版画 まとめ 第六章 公刊『月映』の編集と造本―あやうい共生と編集者恩地孝四郎― はじめに 第一節 雑誌としての公刊『月映』の特徴 第二節 公刊『月映』の編集の工夫―創作版画と詩歌のパート分け― 第三節 公刊『月映』の編集の工夫―「序歌」を冒頭に掲げる― 第四節 公刊『月映』の編集の工夫―第Ⅴ輯の版画を例にして― まとめ 第七章 『月映』の創作版画―西洋美術の受容と展開― はじめに 第一節 明治末における西洋美術の流入―「疾風怒濤の時代」― 第二節 『白樺』の芸術と『月映』の三人―芸術論、紹介記事、図版─ 2-1 『白樺』の躍進 2-2 武者小路実篤と恩地孝四郎 第三節 『月映』の三人の西洋美術受容─ムンク、ルドン、ビアズリー─ 3-1 『白樺』の美術紹介の方法 3-2 『月映』の三人とムンク 3-3 『月映』の三人とルドン 3-4 『月映』の三人とビアズリー 第四節 田中恭吉とゴッホ―創作版画への展開― 4-1 『白樺』の「天才ゴッホ」像 4-2 『白樺』のゴッホ特集と複製図版 4-3 田中恭吉《ひそめるもの。》とゴッホ 4-4 書物・印刷物を通じた西洋美術理解と創造 まとめ 第八章 『月映』の文学 はじめに 第一節 『月映』の文学の助走―回覧雑誌『密室』後期の田中恭吉と結核発病― 1-1 田中恭吉の文学と結核 1-2 田中恭吉の文学作品の変遷 結核発病直後 第二節 田中恭吉の詩歌の変遷と公刊『月映』 2-1 公刊『月映』の文学概観 2-2 田中恭吉の文学作品の変遷 結核進行期 2-3 田中恭吉の文学作品の変遷 終末期 2-4 詩歌と絵画の交流関係―「寥人孤詠」と《綯はれゆく歓喜と悲愁》― 第三節 藤森静雄の詩と公刊『月映』― 生と死をめぐる表現のひろがり― 3-1 公刊『月映』の詩歌再考 3-2 藤森静雄の詩 まとめ 第九章 公刊『月映』第Ⅳ輯「死によりて挙げらるる生」の哀悼をめぐる表現と三人の絆 はじめに 第一節 公刊『月映』第Ⅳ輯「死によりて挙げらるる生」の概略と制作の経緯 第二節 「死によりて挙げらるる生」の作品考察 2-1 藤森静雄「妹は逝きぬ」 2-2 藤森静雄の版画作品 2-3 恩地孝四郎の詩「哀傷・涕泣・願求」と版画作品 2-4 田中恭吉《埋葬》と短歌 第三節 「哀悼の群れ」と「弔いの循環」による絆の強化 まとめ 終章 公刊『月映』廃刊後 結章 あとがき 著者プロフィール 橋本 真佐子 (ハシモト マサコ) (著) 1980年神戸生まれ、大阪育ち。2024年、立命館大学大学院先端総合学術研究科一貫制課程修了。博士(学術)。専門は、比較文学、近代文学。現在、沼津工業高等専門学校助教。
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「藝」「際」「間」を究める~JARFO三十年の歩み~
¥1,980
「藝(げい)」「際(きわ)」「間(あわい)」を究める ~JARFO三十年の歩み~ 石田 淨(いしだ じょう) 著 2024年6月20日 初版第1刷発行 1,800円+税 ISBN978-4-909819-17-8 C0095 ※※発送手数料にかんして※※ 本書は2冊までならスマートレターでお送りできます。 また、4冊までならクリックポストでお送りできます。 本書のみお送りする場合です。ほかの書籍との組み合わせの場合はこの限りではありません。 * 《「鑑賞」が孕む真実とは何か。》 《鑑賞者の精神状態は、アーチストの人生経験が凝縮された作品を通して表出される「気」の影響を受ける。》(本文より) 政治活動にのめりこみ、歴史研究に没頭した男の人生は とある企業メセナを担って以来 「運動としてのアート」へと大きく舵を切る。 芸術とは、作品とは何か。 創る者と観る者とのあいだには何が起こるのか。 今なお問い続ける石田淨、82歳にして初の単著。 (以上、帯の言葉) 【JARFOとは】Japan Art Forumの略称。「ジャルフォ」と呼称する。正式名称は「NPO法人京都藝際交流協会JARFO」。京都市内に2か所のギャラリースペースをもち、芸術家の活動や発表の支援を行っている。 * 目次 はじめに 第一章 私とは何者か 一 出生 二 十代~三十代 政治運動に憧れる 学生運動に没頭 大学院へ進み、幸徳秋水と社会主義を研究 ロシアへの関心 三 教職に就き、大いに学ぶ アルバイトに明け暮れた学生時代 教育現場での五十年間 徹底した個の尊重に瞠目 バブル経済とメセナ 第二章 人生を変えた「メセナ」 メセナとは 一 徳島ハレルヤ製菓株式会社 創業者 岡 武男 全国に先駆けた文化芸術振興推進企業 二 任意団体JARFO結成 バブル経済の崩壊 フィリップス大学日本校 三 NPO法人 京都藝際交流協会JARFOの設立 任意団体からNPO法人へ 第三章 「藝(げい)」「際(きわ)」「間(あわい)」を究める 評価の基準とは 一 日本における作品の「鑑賞」と「評価」 美術教育の在りかたに疑問符 二 「藝際」に込めたもの 「藝」と「芸」 「際」 三 「間」とは 「あわい」は「あいだ」でも「ま」でも「かん」でもない 「気」とは何か あるのか、ないのか JARFO三十年の歩み 【特別収録】 企業メセナの一形態 ――アートフォーラム三年間の歩み―― おわりに 参考文献 石田 淨 著作一覧 石田 淨 略歴 著者近影 * 石田淨さんとのご縁は、エディション・エフ刊写真集『揺れて歩く』がきっかけでした。 『揺れて歩く』は、著述家の清水哲男さんによる初の写真集。出版記念の最初の写真展(2020年9月レティシア書房)を開催した時に展示を見てくださった石田淨さんは、『揺れて歩く』をはじめ清水哲男さんの著作を高く評価されたのでした。それでギャラリー「JARFO京文博」(石田さんが代表を務めるNPO法人京都藝際交流協会が運営)での写真展開催を申し出てくださったのだそうです。 2021年4月に行われたその写真展は好評を博し、会場では『揺れて歩く』もたくさん売れました。 石田さんは『揺れて歩く』の編集手法や装幀デザインをたいへん褒めてくださいました。出版社としてこんなに嬉しいことはない、と感激したものでした。 JARFO京文博では従来から個性豊かな作家による個展、グループ展がコンスタントに開催されており、清水哲男さんの写真展もテーマを変えて何度も行われました。たびたび鑑賞しにうかがっていましたが、ある日石田淨さんが在廊されていた折にあらためてご挨拶したところ、著書執筆の企画をお聞きしたのでした。 2023年の秋のことでした。 * 「僕はもうトシですからね、時間がないんです。だから早くつくらないと」 二言めにはそうおっしゃる石田淨さん。 制作に着手してから完成までの間に、いったい何度海外出張に出かけられたでしょうか。とってもお元気です。 ほんとにお元気です。 * 石田淨自身の人生と、JARFO結成以来の30年を駆け足でたどる本書。 石田淨ならではの芸術へのアプローチ、鑑賞の解釈に触れてください。 あなたが次回展覧会へ行った際には、作品の見かたが、少し変わるかもしれません。 【著者】 石田 淨(いしだ・じょう) 1942年京都府舞鶴市生まれ。1973年立命館大学大学院文学研究科修士課程修了(西洋史専攻)。在学中より歴史教師として教鞭をとある。1993~96年、徳島県阿波之里アートフォーラム代表に就き企業メセナ活動に従事。1997年Japan Art Forum(JARFO)結成、代表に就任。