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気配
¥1,760
『気配』 村田はるせ 1,600円+税 2024年5月発行 ISBN978-4-909819-16-1 ※※発送手数料にかんして※※ 本書1~6冊の場合はクリックポストが最も安価です。ご注文の際はクリックポストを選択してください。 なお、本書のみお送りする場合です。ほかの書籍との組み合わせの場合はこの限りではありません。 * 《あの公園のあの木で 啼きしだいていた蝉たちを想う あれだけの密度の時雨にまた打たれたい》 (「蝉時雨」より) 「蝉時雨」と題された短い詩の一部分を、帯に使わせてもらいました。 蝉の啼く季節も、もうすぐですね。 村田はるせさんの詩は、強い言葉や表現はなく、かといって、それではその言葉の連なりを「柔らかい」とか「優しい」とか、そういうふうに形容するのもためらわれます。 シンプルな言葉遣いの中に、自己を見失わない確かな意志と、まっすぐな視線を感じます。 とはいえ、詩の味わいかたは人それぞれ、気持ちそれぞれです。 あなたはどのように読み、感じてくださるでしょうか。 《きっと薄墨色の 濃淡がことなるやわらかな紙を用意して ゆったりとした波形に切りとったのだろう それを少しずつずらして重ねたのだろう 咲きかけのばらの花びらが ちょうどそうであるように》 (「空の仕業」より) 《自信にみちた声が理路整然と迫ってきて わたしのほうが悪いような気がしても 透明の盾を構えてむかっていく稽古》 (「稽古」より) 《わたしは言葉を探すことで、日々遭遇するままならない事態との折り合いをつけようとしていたのです。》《わたしの中の不甲斐なさ、無力さといったものに言葉を与えたかったのでしょう。それは、もっと強く飄々と生きたいという望みの裏返しなのでしょう。》《単純ではない世の中を単純なものとして生きざるをえない不特定多数の人びとに紛れるわたしの内側にちらちらと燃えてくる怒りもまぶされています。》 (「あとがき」より) 詩集『気配』をお読みくださるみなさんの心に、なにがしかの糧が、足跡を残すと願います。 *********** 目次 〈鏡のなか〉 鏡 忘れたいこと 晴れた日には忘れほうけたままでいることども 雪の日 いるということ し 泣くな 稽古 魚が泳ぐように にげる あのですね ノッポとちび 〈まのわるい人たち〉 まのわるい人たち 小犬をつれた 車窓 北陸新幹線 選択 敵だらけ 〈わたしの外の声〉 みはる いつかの記憶 蝉の弔い 投書 夜の家いえ 詩をする わたしの外の声 冬寺 蝉時雨 狭間のとき 狭間の景色 鴉は映画を観ない 鳩と卵焼き 空の仕業 気配 白岩源流にて 〈うまれたのでも ない まち〉 思郷の 花がさく ―ビルマの首都にて― 単線電車の無人駅音頭 駅長 幻の打ち明け話 あとがき ************ 本書は、詩人の意図を酌み、ごく少部数を制作しました。 版元としましては、部数が少ないことで否が応でも高くなる原価を少しでも抑えるためにあれこれと工夫をしました。 そのひとつが、帯の上端の曲線の表現に、一点一点、手で紙をちぎるという方法を用いたことです。こうした曲線のカットを機械で行うことは不可能ではありませんが、型代がたいへん高くつきます(何万部も印刷するならコストは吸収されますけどね)。 この帯デザインをいたく気に入った版元に対し、「僕が手でちぎります」とデザイナー氏の提案。その言葉に思いきり甘えました。 微妙に、一冊一冊が異なる曲線。ホントに微妙な違いです。見比べて可笑しがるのは版元の特権です。すみません。 村田はるせ 富山県の「舟の会」同人。アフリカ文学(フランス語表現)専攻。アフリカについて学ぶ「クスクス読書会」を2012年から主宰。西アフリカのフランス語公用語圏諸国で出版された絵本を展示や朗読をとおして紹介する活動もしている。訳書に『アヤンダ おおきくなりたくなかった おんなのこ』(ヴェロニク・タジョ文・ベルトラン・デュボワ絵/風濤社/2018年)。『神(イマーナ)の影 ルワンダへの旅―記憶・証言・物語』(ヴェロニク・タジョ著/エディション・エフ/2019年)がある。
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ぬばたま
¥1,980
『ぬばたま』(歌集) 北夙川不可止 著 1,800円+税 A5判変形 並製 256ページ ISBN978-4-909819-09-3 《射干玉(ぬばたま)の黒き仔猫を「ぬばたま」と名づけて飼ひぬ七月のすゑ》 北夙川不可止(きたしゅくがわ・ふかし)は歌人でコラムニスト。 『ぬばたま』は作歌生活25年にして初めて上梓する歌集である。 作歌は膨大だが、2010~2018年に詠んだ歌のなかから 772首を厳選した。 著者の活動は幅広く、アートイベントの企画運営、また近代建築・景観の保全活動にも取り組んでおり、本書の収録短歌からは、その多岐にわたる活動が窺い知れる。 「ぬばたま」は、歌人がかつて飼っていた猫の名前である。 「猫と美少年をこよなく愛し、近代建築と美術と音楽を愛で、美しき建物が壊される不条理に怒り(中略)、吟行をする日々が 絵巻物のように繰り広げられる」 (寮美千子によるあとがき「永遠の幼子、伯爵」より) * 歌人・北夙川不可止の第一歌集、『ぬばたま』。帯の言葉には、歌人をよく知る作家・詩人の寮美千子さんが本書へ寄せた原稿からの一節を引いています。 歌人は猫との暮らしを詠み、少年との愛の戯れを詠み、文化的遺構の美しさを詠みます。 血糖値が跳ね上がり入院生活を余儀なくされた日々の歌などは、退屈を逆手にとって愉しもうとする歌人の心情がにじみ、とてもユーモラスです。 今も愛する猫たちと暮らす歌人ですが、「ぬばたま」は忘れ難き美しい猫だったと述懐しています。 * 東京のピカレスクギャラリーでは、 2020年6月13日(土)〜8月2日(日)のあいだ、 短歌と写真のコラボレーション展「叛亂の豫感(はんらんのよかん)」 が オンラインにて開催されました。北夙川氏の短歌と写真家・北沢美樹氏の美しい写真のコンビネーション。展覧会を記念した作品集「叛亂の豫感」がギャラリーの通販サイトで販売されています。そちらもぜひどうぞ! リンクをクリックすれば別ウインドウで開きます。⇩ https://picaresquejpn.com/work/hanran-no-yokan/ * 【著者】 北夙川不可止(きたしゅくがわ ふかし) 1964年兵庫県西宮市生まれ。同志社大学神学部中退。1994年に獄中で短歌を始め、所属結社は『アララギ』、『新アララギ』、『玲瓏』と移籍。近代建築や歴史的都市景観の保全に取り組み、著書に『東西名品 昭和モダン建築案内・新装版』(書肆侃侃房、2021年秋刊行)などがある。オープンリーゲイとしてBL短歌同人誌「共有結晶」創刊に参加。活動分野は多岐にわたり、各所で「伯爵」と呼ばれ親しまれている。
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水平線
¥1,320
著者 山川三多(やまかわさんた) A5判、104ページ 定価 1,200円+税 ISBN978-4-9908091-2-6 2016年6月30日初版第一刷発行 『昼のビール』に続く山川三多詩集第2弾! ◆書き下ろし詩編35編と「あとがき」を収録しました。 帯文は、「八十路の 清々しさに 背筋が 伸びる」。 年長者の発言には重み、含みがあります。背景には歳月という長い道のりがあります。山川三多は八十歳。詩篇の一行一行、一語一語、またひと文字ひと文字を目で追って読んでいくと、知らず背筋を伸ばし姿勢を正している自分に気づきます。 ◆表紙画・挿画は『昼のビール』と同じくナカライエイコが描きました。 ◆装幀は京都のデザインプロダクション、ウーム総合企画事務所の俊才デザイナー、岩永忠文が担当しました。 【書き下ろし詩集です】 『昼のビール』に好評を得て、再びエディション・エフから詩集を刊行することを念頭に、山川三多はいくつもの詩を書きました。幾度も、書き直しました。エディション・エフの編集室には、赤字や二重線でいっぱいになった原稿用紙が届きました。パソコンに打ち込んで、出力した詩篇の束は、さらに詩人と編集室を往復しました。 2015年に『昼のビール』が刊行された頃、山川三多は船旅に出ていました。海と空を見つめて過ごす幾日かのあいだに、多くのことを考えました。さまざまなことを考えました。旅の友と人生談義に花を咲かせました。船旅は非日常のようでいて、日常でもありました。発見にもあふれていましたけれど、人生のおさらいでもありました。 『水平線』の収録詩は、船旅のあいだ、または帰着後に書き綴られたものばかりです。八十路にして、「人生の第四コーナー」をまわるぞと意気込み、「やるべきことは山ほどある」と言い、「青春なんて/あとからいくらでも/つくり出せるのに」と老いる気配のない、山川三多です。 山は山にあらず 川は川にあらず などと悩んだこともあり ちっぽけもわるくはないと、 ちっぽけな自分がいます。 ——(「風」)
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昼のビール
¥1,320
『昼のビール』 山川三多詩集 著者 山川三多(やまかわさんた) A5判、88ページ 定価 1,296円(税込) ISBN978-4-9908091-0-2 2015年6月30日初版第一刷発行 『昼のビール』は、山川三多の29篇の詩を仏訳とともに編んだ詩集。 ◆著者の山川三多はビジネスマンとして多くの事業を手掛け、いち早くIT業界にも進出し現在のインターネットプロバイダ産業の基礎固めにも貢献した人物です。過去にはビジネス関連の著作も多数あります。学生時代に聴講した西脇順三郎はじめ内外の詩人に造詣が深く、一線を退いたあとは詩作に励んでいます。これまでに『ざまあみろ』等三冊の詩集(いずれも敬文舎)を上梓。 ◆仏訳を担当したのはナディア・ポルキャール。現在パリのソルボンヌ大学でフランス文化を教える傍ら、映画製作や小説の執筆を行うアーチスト。16年間京都に住んでいた経験を活かし、さまざまなジャンルで日仏翻訳を手がけています。 ◆挿絵を描いたナカライエイコは幻想的かつ温かみのある画風が特徴。『昼のビール』では自身のデザインオフィス名義で装幀も手がけました。