-
ぼくのがっかりした話
¥1,540
シリーズ再生の文学 『ぼくのがっかりした話』 ■■■英明企画編集の本■■■ 著者 セルジョ・トーファノ 訳者 橋本勝雄 新書判 160ページ 定価 1,400円+税 ISBN 978-4-909151-31-5 2021年8月30日 発行 【帯の言葉】 おなかをこわして肉食をやめた人食い鬼、没落したアラジン、赤ずきんの家で下男として働く狼、不眠症に悩む眠れる森の美女……。イタリアの鬼才が贈るユーモアとペーソスに満ちたがっかりの世界! * いったいこれはどんな物語なのでしょう? セルジョ・トーファノって誰? 訳者の橋本勝雄氏による詳しい「訳者あとがき」から引用します。 《セルジョ・トーファノ『ぼくのがっかりした話』は、いまから百年ほどまえ、一九一七年九月三〇日から一〇月二八日まで、五回にわたって雑誌『コリエーレ・デイ・ピッコリ』に掲載されました。『コリエーレ・デイ・ピッコリ』は一九〇八年に創刊され、一九九六年まで八八年間にわたってイタリアの子どもたちに親しまれた絵入り週刊誌です。》(128ページ) なんと、100年前に書かれた物語ですと。 しかも「赤ずきんの家で下男として働く狼、不眠症に悩む眠れる森の美女」だなんて、堂々たる古典名作童話を揶揄しまくっているとは! 面白そうでしょ! ぜひぜひお読みください! * 物語の冒頭です。 《ぼくが小学校の卒業試験に三回めの落第をしてしまったので、気の毒な父さんと母さんは、このままぼくに勉強を続けさせるかどうか迷ってしまった。(中略) 「それは時間のむだですよ」ぼくをよく知っている先生は、はっきり言った。「わたしの言うことをお聞きなさい。この子は頭が悪すぎるんです」 (中略) たくさんの家庭教師がやってきた。その数なんと、一か月で一二人。(中略)そしてみんな、口をそろえて父さんに言った。 「時間のむだですよ。まあ、お聞きなさい。この子は頭が悪すぎます!」》(5~6ページ/第一章 はじめに、父さんと母さんが、がっかりした話が語られる より) ……ひどくない?(苦笑) 「頭が悪すぎる」と散々な言われようをしている「ぼく」、主人公のベンヴェヌート少年。それでも13人めの家庭教師としてやってきたパルミーロの語る話に魅せられて、おとぎ話の世界へ出発する……。 ところが、旅先で出会うのはどれもこれも「がっかりする話」。 《赤ずきんの家をあとにしたぼくらは、あまりにもつらい光景を目にして、なんともいえないほどがっかりし、そのうえおなかがすいていた。》(98ページ/第九章 七つめのがっかり より) * 奥付に記載されている著者情報です。 【著者】 セルジョ・トーファノ Sergio Tofano (1886-1973) イタリアの俳優、演出家、挿絵画家、漫画家。1909年に役者デビュー、複数の劇団の共同座長を務め、国立演劇学校で後進の指導にあたるなど、戦前から戦後まで舞台、映画、テレビで活躍。洗練されたユーモアを特徴とする「ブリッランテ」役を得意とした。STOのペンネームで挿絵を手がけ、1917年に雑誌『コリエーレ・デイ・ピッコリ』に発表した漫画『ボナヴェントゥーラさんの冒険』のシリーズが大人気となる。『ぼくのがっかりした話』は、カルロ・コッローディからジャンニ・ロダーリに至るファンタジー文学の系譜に属する貴重な作品。 【訳者】 橋本勝雄 (はしもと かつお) 1967年生まれ。京都大学文学部卒業、同大学大学院博士後期課程単位取得退学。現在、京都外国語大学教授。訳書に『イタリア語の起源――歴史文法入門』(パトータ)、『イタリア20世紀史――熱狂と恐怖と希望の100年』(コラリーツィ、共訳)、『プラハの墓地』(エーコ)〈第2回須賀敦子翻訳賞受賞〉、『鏡の前のチェス盤』(ボンテンペッリ、トーファノ画)、『19世紀イタリア怪奇幻想短編集』などがある。
-
京都の里山を駆けぬけて
¥1,980
『京都の里山を駆けぬけて アルキニスト/民族植物学者の哲学と軌跡』 ■■■英明企画編集の本■■■ 編著者 阪本寧男、物集女くらぶ 四六判 294ページ 定価 1,800円+税 ISBN 978-4-909151-80-3 2022年1月26日 発行 【帯の言葉】 孤高にして自由 そして天邪鬼な探究者 阪本寧男の魂の記録 【推薦文】 京都大学という密林(ジャングル)は、計り知れない知と行動力をそなえた人財の多様性中心である。人と植物との関わりを探究して世界を駆け巡ったフィールド研究者、阪本寧男の世界は、そのなかでもひときわ引き立ついぶし銀の輝きをはなっている。 ―――――山極寿一 第26代京都大学総長/ 総合地球環境学研究所所長 * 著者の阪本寧男氏は、民族植物学者とありますが、本書は阪本氏が子どもの頃に遊んだ里山の記憶を基点に、「発展」し「便利」になる暮らし、激しく姿を変えてゆく町、失われる里山の自然、戦争の爪痕……といった歴史的、経済的、文化的な側面にも言及しつつ、あちこちに生息していた動物、虫類、もちろん植物も、あらゆる生物についての調査を披露する報告書であるといえます。阪本氏は山科の生まれ。彼が生まれた山科と、現在の山科とではあまりにも風景が異なるそうです。 《ちょっと個人的なことを述べて恐縮であるが、そこがどんな場所であったかというと、標高約一八〇メートルのアカマツ林の典型的な里山であった。生活するのに必要な水はまさに、”水は天から貰い水”で、雨水だけが頼りであった。飲料水は雨水というわけにはいかず、地図の黒丸の左下に旭滝と書いてあるが、この小さな滝へ雨が降ろうが、雪が降ろうが、幼い子供の時から毎朝父と一緒に水汲みに行くことが、誰も絶対文句を言うことのできない日課であった。》(32~33ページ、2 私の「すいば」より) 昼間は停電し、夕方、外が薄暗くなると電気がきて灯りをつけることができる、といった記述もあり、現在では想像のつかないような、戦前の庶民の暮らしぶりが垣間見えます。 阪本氏はアメリカやフィリピンに渡航しての調査も行っています。 どこへ行っても、ひたすら歩いて採集し、調べています。 本書のタイトルには「駆けぬけて」とありますが、サブタイトルの「アルキニスト」とは、登山家をいう「アルピニスト」をもじった「アルキニスト=歩きにすと」なのだそうです。 カッコイイですね! * カバー袖、奥付に記載されている編著者情報です。 【著者】 阪本寧男 さかもと さだお 1930年京都市生まれ。1954年京都大学農学部農林生物学科卒業。1962年ミネソタ州立大学大学院修士課程修了、農学博士(京都大学)。国立遺伝学研究所研究員、京都大学農学部助教授、同教授、龍谷大学国際文化学部教授を歴任。民族植物学専攻。 【編者】 物集女くらぶ もずめ くらぶ 本書の編纂の結成されたゆるやかな集まり。