世界のまんなかの島 わたしのオラーニ
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『世界のまんなかの島 わたしのオラーニ』
●●●きじとら出版の絵本●●●
作 クレア・A・ニヴォラ
訳 伊東晶子
タテ292mm×ヨコ228mm 36ページ
定価:本体1,800円+税
ISBN 978-4-908214-00-4
2015年3月31日 第1刷発行
2016年1月28日 第2刷発行
★★ボローニャ・ラガッツィ賞ノンフィクション部門優秀賞受賞★★
★★東京都板橋区立いたばしボローニャ子ども絵本館主催
第19回いたばし国際絵本翻訳大賞〈英語部門〉受賞作品★★
【帯の言葉】
【推薦文】
「故郷って何でしょう? 作者のニヴォラさんは、
愛情のこもった美しい絵で、故郷の大切さを気づかせてくれます。
オラーニ村は、実は、あなたの故郷かもしれませんよ。」
―――――柳田邦男(作家、評論家)
イタリア・サルデーニャ島の小さな村オラーニ、そこは世界の中心だった。
おばさんたちがパンを焼き、子どもたちは路地をかけまわり、結婚式で輪になって踊る――
遠い国でありながらどこか懐かしい情景に心洗われる秀作絵本
*
美しい絵本です。
帯文で柳田邦男さんがおっしゃっているように、作者は、愛しいものを撫でるように丹念な筆致で故郷の風景を描き込んでいます。ああ、ここが好きなんだな、ほんとに好きなんだなこの人は。なんだか、しみじみと、作者の気持ちが伝わってくるような気がします。
この絵本を見れば、ああこんな所へ行ってみたいな、と思うかもしれません。でも、作者はツーリスト誘致のために描いたのではないんですよ、もちろん。
自分が幼かった頃の、小さな村オラーニ。当時の家並み、暮らし向きはずいぶんと失われてしまったようです。ニヴォラさんは大好きな故郷を忘れないために、そしてお父さんとそのきょうだいたち、いとこたち、村の人たちへの尊敬と愛情を示すために、この本を描いたのでしょう。そして、絵本を読む人に、故郷を思い出してもらうために。
*
絵本の冒頭です:
《はっとするほど 青い海、イルカが はねて遊ぶ海に、島がひとつ 浮かんでいる。真っ白な小石の浜には 小さなほら穴が いくつもあって、鍾乳石のつららが ぶらさがっている。浜を見おろす けわしい崖には 岩のあいだに アザミや かおりの強いタイムがはえ、小さなヤギが そろそろと歩いていく。(中略)
この島の ちょうど まんなか、まわりを山にかこまれた 盆地に オラーニ村がある。わたしの おとうさんは そこで生まれた。》
(すべての漢字にふりがなが振ってあります)
*
文章はこのように、淡々としたナレーションのような調子で、村の風景や人々の様子を語ります。驚くような出来事や、謎解きの必要な事件が起こるわけでもなく、「わたし」が歩いてたどる道すじにしたがって、訪ねる家、会う人、覗く家禽が描かれます。絵本の最後のほうになってようやく、作者の思いのほとばしる一文が出てきます。
《ああ、あのオラーニの村が だいすき!》
ニヴォラさんが普段暮らすのはニューヨーク。オラーニとの違いに、行くたび帰るたびに愕然としたことでしょうね。そして、ニューヨークを闊歩する大人たちを見て、「わたし」はつぶやくのです。
《この人たちのオラーニは どんなところなんだろう?》
*
誰もが心にふるさとをもっています。誰にとっても、わがふるさとが世界の中心。
世界のまんなか。わたしのふるさと。
……ふるさとって、いったい何なのでしょうね。
*
以下、カバー袖に記載の著者情報です:
【作】
ベアトリーチェ・アレマーニャ Beatrice Alemagna
1973年、イタリア・ボローニャ生まれ。いま、最も注目を集める絵本作家のひとりである。イタリア・アンデルセン賞最優秀画家賞ほか、受賞歴多数。自らが「代表作」と呼ぶ本作は10か国以上に翻訳され、ヨーロッパを中心に世界的ベストセラーとなっている。邦訳作品はほかに『もうふのなかのダニィたち』(ファイドン)など。パリ在住。
【訳】
みやがわ えりこ 宮川絵理子
1987年、東京都生まれ。東京外国語大学外国語学部にてイタリア語を専攻。卒業後、イタリア・トスカーナで6年間を過ごす。シエナ大学史学文化財学科人文科学コース(美術史専攻)在学中に、第23回いたばし国際絵本翻訳大賞(イタリア語部門)最優秀翻訳大賞を受賞。2017年に同大学を卒業、帰国。
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