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きょうは、おおかみ

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『きょうは、おおかみ』
●●●きじとら出版の絵本●●●

文 キョウ・マクレア
絵 イザベル・アーセノー
訳 小島 明子

タテ292mm×ヨコ228mm 36ページ
定価:本体1,800円+税
ISBN 978-4-908214-01-1
2015年3月31日 第1刷発行
2017年3月13日 第3刷発行

★★カナダ総督文学賞児童書部門受賞★★
★★東京都板橋区立いたばしボローニャ子ども絵本館主催
  第20回いたばし国際絵本翻訳大賞〈英語部門〉受賞作品★★

【帯の言葉、推薦文】
「Woolfのoが抜け落ちて、おおかみになっちゃったバージニア。
 お姉さんのバネッサは、悲しい現実からバージニアをすくうことができるんだろうか。」
   ―――――金原瑞人(翻訳家)

 *

帯文は、意味深ですね。さすがは翻訳家の金原瑞人氏の推薦文です。この絵本の原題は「Virginia WOLF」。英国の小説家ヴァージニア・ウルフ(Virginia WOOLF)の名前をもじったもので、内容も、ヴァージニアとその姉ヴァネッサをモデルにしています。
ですが、そのことはまず措いて、絵本の世界へはいってみましょう。

 *

絵本の冒頭です:

《あるひ、いもうとの バージニアは めがさめると、
 おおかみみたいに むしゃくしゃしてた。
 おおかみみたいに ぐるるる、がるるる。
 おおかみみたいな ことをする。

 バージニアの えを かいてたら、
 「バネッサねえさん、だめ!
  がおーーう!」》

 *

いったい何が始まるのか?(笑)
ぐるるるがるるるがおーーーだなんて怪獣絵本じゃあるまいし……
でも、部屋に見えるのは、まさしく「おおかみ」の黒い影。
やっぱり、「狼少女」の物語??? いやいや、ちょっと待って。

どうやら、「いもうとのバージニア」ったら、今日はひどくご機嫌ななめ。
そしてどうやら、「バネッサねえさん」は絵がとても上手みたい。

どんよりしたまま晴れない妹バージニアの気分をなんとか盛り上げたくて、バネッサは部屋の壁に外の庭の風景を描きます。色とりどりの花たち、さえずる小鳥たち。バネッサの描く絵の中に、いつしか姉妹は入っていきます。

翌朝、ご機嫌のなおった(?)バージニアは、バネッサの手を取って、

《「ね、おそとで あそぼうよ」》

と、にっこり笑うのです。お話の最後にようやく、二人がよく似た可愛い姉妹であることがわかります。

 *

なんだかわからないけど、むしゃくしゃして何もかも気に入らない日というのは、誰にでもありますね。ああもう明日は永遠に訪れないんだわ……的な。でも、絶望感で真っ暗に始まった一日が、ちょっとしたきっかけで薔薇色に変わることもあります。
……ウチの子、反抗期?……
……きょうだいで喧嘩ばかり、仲良くできないのかな……
つい、こんなふうに考えることが多いなら、この絵本『きょうは、おおかみ』は何かヒントをくれるかもしれません。

 *

最初に書いたように、この絵本は20世紀英国の重要な小説家ヴァージニア・ウルフと、生涯彼女のよき理解者であった実姉の画家ヴァネッサ・ベルをモチーフにしています。
もしご関心があれば、二人の評伝も出版されていますのでぜひお読みください。ヴァージニア・ウルフの小説もほとんどが翻訳されています。
ウルフは59歳の時に夫レナードと姉ヴァネッサに遺書を置いて、入水自殺してしまいます。
早くから神経衰弱を患い、つねに精神の不安定を抱えて辛うじて暮らしていたヴァージニア。彼女を支え続けたヴァネッサの悲しみはいかばかりだっただろうか……と、これは、この絵本を初めて読んだ時に、わたし(エディション・エフ代表)の思ったことでした。およそ英国文化とは縁のない生活なのですが、ヴァージニア・ウルフだけは、美大生時代からよく読んでいましてね。躁鬱病の鬱状態に陥ったヴァージニアは、壁に花の絵を描いて救い出してくれる姉も今度ばかりは傍になく、弱々しく「ぐるるる、がるるる」とうめきながら逝ってしまったのかしら……。

 *

『きょうは、おおかみ』は、気まぐれで変わりやすい子どもの心象風景を、やさしく、しかしくっきりと、描いてみせています。いろいろなシチュエーションにあてはめることができ、読み手の年齢や立場を選びません。ぜひぜひ、お読みください。

 *

以下、カバー袖に記載の著者情報です:

【文】
キョウ・マクレア Kyo Maclear
英国生まれ。美術評論家、小説家として定評がある。2作目の児童書となる本書は、作家ヴァージニア・ウルフとその姉である画家ヴァネッサ・ベルをモチーフにしている。姉妹のきずなをテーマとし、庭や美術への愛を盛り込んだ。カナダのオンタリオ州トロントに家族と暮らす。

【絵】
イザベル・アーセノー Isabelle Arsenault
カナダが誇る最高のイラストレーターのひとり。子どもの本の絵を手掛ける。「おおかみきぶん」なときに元気をくれるのは、2人の息子、妹のエレーヌ、おいしいもの、お天気の日、美しい本、そしてキョウ・マクレアの言葉。キョウの書いた言葉からはいつでもインスピレーションの庭が現れると語る。ケベック州モントリオールに家族と暮らす。

【訳】
小島明子 Akiko Kojima
広島県生まれ。「やまねこ翻訳クラブ」会員。地元で英語読書会を主宰し、児童書の魅力を大人の読者に伝える活動をおこなっている。第20回いたばし国際絵本翻訳大賞英語部門最優秀翻訳大賞を受賞。広島市に家族と暮らす。

 *

本書訳者の小島明子さんは、第20回いたばし国際絵本翻訳大賞での受賞をきっかけに、出版社「きじとら出版」を立ち上げ、自ら翻訳した絵本『きょうは、おおかみ』の出版を実現されました。

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