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船を見にいく

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『船を見にいく』
●●●きじとら出版の絵本●●●

文 アントニオ・コック
絵 ルーカ・カインミ
訳 なかの じゅんこ

タテ292mm×ヨコ205mm 28ページ
定価:本体1,600円+税
ISBN 978-4-908214-05-9
2016年7月31日 第1刷発行

★★東京都板橋区立いたばしボローニャ子ども絵本館主催
  第22回いたばし国際絵本翻訳大賞〈イタリア語部門〉受賞作品★★

【帯の言葉、推薦文】
「船は決して鉄のかたまりなどではない。
 じゃ、何なの?と聞かれたら、この絵本を読んでみて、と
 僕は静かにおすすめする。」
   ―――――幅 允孝(BACHブックディレクター)

 *

幅允孝氏の帯文がいいですね。わたしも「船て、どやねん」なんて言われたら、黙ってこの本を差し出します。
この、何でもスピードの速いことばかりがもてはやされるようになった世の中で、船は、いささか置いてきぼりを食らったような感じです。たまに注目されたらアレですよ、コロナですよ。船、受難の時代……。でも、この絵本は、そうした世の中の事情、国際関係のあれやこれやなんて関係のないところで、黙々と仕事をする船と、それを見つめる人びとのことを描いています。

 *

絵本の冒頭です:

《このまえ、ぼくは船を見にいった。
 じっと、とまったままの船のまわりでは、たくさんの
 人がはたらいていた。高層ビルみたいに巨大な船に
 くらべたら、人はアリのように小さい。
 (中略)
 船はじっと、とまってるわけじゃない。
 ゆっくりと、いきをしながらねむっているんだ。》

 *

「ぼく」がよくいく港では造船も行っているようです。
巨大建築物のように、船は毎日少しずつ形がつくられていって、いつのまにかできあがる。
古くなって、解体される船もある。
「ぼく」は、そんな港での営みをじっと見つめてしずかに描写します。
造られる、あるいは壊される、または停泊中の、船を見つめて、見たままを語ります。

船旅に出るじゃなし、旅立つ船を見送るでもなく、帰ってきた船を迎えるでもない。
と言うと、なんなのそんなに愛想なしの絵本なの? と思いますか?
いえいえ、だからこそ、船の魅力が見えてくるんですよ。

《パパがぼくの手をとって、そっと船にあててくれたことがある。
「じっとしていてごらん。ほら、船がいきをしているのがわかるだろう」》

ここ、わけわからず泣けるとこです。
絵本の舞台になっている町では、港が雇用創出に重要な位置を占めていて、町の人が港によって生活を成り立たせていることが、言外に伝わってきます。だから、みんな港を、船を、愛そうとしているんですよ。

《この町では、こどものころ、みんな、港に船を見にいくんだ。
 「おじいちゃんも、あなたぐらいのときには、そうだったのよ」と、ママ。》

 *

表紙は一見、ポスター文化華やかなりし頃の「ノルマンディー号」を髣髴させますね。わたしも昔のポスターデザインが好きで、関連美術展をよく観にいきました。カッサンドルの「NORMANDIE」はその迫力でけっして忘れ得ない作品です。本書を見た時、あっあれやん!と思いました。
でも、『船を見にいく』は、豪華客船での船旅そのものには触れません。
わかるのは、どんなものにも縁の下の力持ちたちがいるということ。
どんなものにも、どんなひとにも、それぞれ命と物語があるらしい、ということ。

 *

以下、カバー袖に記載の著者情報です:

【文】
アントニオ・コック Antonio Koch
1976年、イタリアのボローニャ生まれ。ボローニャ演劇学校で学び、ボローニャを拠点とする劇団「テアトロ・デッラ・ラッビア」に所属。脚本家兼俳優として活躍しながら、短編小説や詩などの創作を手がける。子どもに向けた作品に、日本人イラストレーターと組んだ “Brutto + Bello” (Keisuke Shimura絵、未訳)などがある。

【絵】
ルーカ・カインミ Luca Caimmi
1978年、イタリアのマルケ州ファーノ生まれ。ウルビーノ芸術高等学校のアニメーション・デザイン科で学んだ後、国立ウルビーノ美術学院を卒業。ボローニャ国際絵本原画展で入選ほか、受賞歴多数。短編コミックや挿絵なども手がけ、本書が初めての絵本制作となる。本書の表紙画は、カッサンドルによるポスターアートの傑作「ノルマンディー号」へのオマージュでもある。

【訳】
なかの じゅんこ 中野順子
1966年熊本県生まれ。西南学院大学文学部外国語学科英語専攻卒業。子育てのかたわら、通信教育で英日翻訳を学ぶ。NHK「イタリア語会話」をきっかけに、独学でイタリア語を修得。現在、福岡県内にてこども英語教室の講師。本作で第22回いたばし国際絵本翻訳大賞(イタリア語部門)最優秀翻訳大賞を受賞。

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