核エネルギー大国フランス 「統治」の視座から

著者 セジン・トプシュ
訳者 斎藤かぐみ
解説 神里達博

A5判 284ページ
定価:2,916円(税込)
ISBN978-4-909819-05-5
2019年6月30日初版第一刷発行

《本書は世界最大の核利用国フランスにおける原子力とデモクラシーとのつながり、いやむしろ落差に関する論考である。フランスの核事業複合体に対する公共的・社会的な批判活動、その変遷、高揚と低迷、再起を扱い、それが過去数十年にわたり事業者・国家・規制機関に対して、どのような問題を提起したかも視野に入れている。(中略)核事業をめぐる議論は著しい鎮静化の段階に入っていた。90年代終盤から〔核事業〕推進勢力は、気候変動に立ち向かう環境派というイメージを巧妙に打ち出しており、この新たなイメージ戦略が大きく効いていたのである。》(本書p.14-15、「日本語のための序章」より)

科学史家・科学社会学者セジン・トプシュはフランス国立学術研究センター(CNRS)研究員。本書の原著書は、2011 年 3 月以前にトプシュが完成させていた博士論文が骨子となっています。出版へ向け最終段階に入っていたそのときに、東日本大震災が起こり、福島第一原発事故が発生しました。トプシュは日本にかんする論考をさらに加筆し、2013 年、スイユ社から出版されました。

本書日本語版は、かねてからこの分野に関心をもつ翻訳家、斎藤かぐみさんの熱意が出版の実現を果たしたといえます。論文とはいえ、広く一般の人びとにも読まれるよう、文体や訳語に読みやすさを考慮しました。
さらに、 千葉大学教授で科学技術社会論の神里達博さんが、本書の内容を私たちの身辺にぐっと近づける解説を執筆してくださいました。
私たちは、あの未曽有の惨事を「無かったこと」にしようとしてないでしょうか? 五輪や万博があの最悪の人災を帳消しにできるとでも?

エディション・エフは、フランスの核事業推進史とそれに対する批判活動・反対運動の軌跡をたどり検証した本書は、世界唯一の被爆国でありながら核保有大国にすり寄り、国土を原発列島化させているこの国の人びとにとって重要な参考文献になると考え、出版を決めました。

人間の命が代々継がれていくものである以上、広島も長崎もまだ終わってはいません。第五福竜丸も、ビキニ環礁も、チェルノブイリもけっして終わることはありません。福島は、言うまでもありません。

【目次】
日本語版のための序章

序論

第1部 1970年代の強硬な核事業――抗議活動を意に介さない国威発揚

第1章 1974年のメスメール計画の誕生
1.石油危機以前の大きな胎動
2.大量消費社会の「安価なエネルギー」なる触れこみ
3.「エネルギー自立」の実態
4.リスク社会の創出へ

第2章 抗議するフランス――原子力への幻滅
1.草創期のアクター・ネットワーク――メスメール計画以前
2.オイルショックから、原発ショックへ
3.科学者たちの批判活動

第3章 エコロジスト活動家たちの監視と馴致
1.穴だらけの公衆意見調査
2.適正化は後づけで
3.経済による統治
4.情報提供および秘密化による統治
5.社会科学の専門要員
6.世論調査による統治
7.批判活動に対する統治の「新たな精神」

第2部 チェルノブィリに続く10年間――専門評価と透明化へ、誘導された批判活動

第4章 1986年4月26日の直後――秘密化による統治
1.「国境で止まったプルーム」
2.秘密主義の規範化/常態視

第5章 衣替えした抗議活動
1.チェルノブィリ後の推進体制
2.批判活動の専門科学化――CRIIRADとACROの誕生
3.対抗調査というアクション
4.「透明化」の運用――ラ・アーグ情報委の事例

第6章 ニュークスピーク――用語による統治
1.端緒は冷戦期
2.神聖化から脱神聖化へ
3.チェルノブィリ後の核用語

第3部 1990年代以降――「参加」と「環境主義」の至上命令

第7章 汚染地における「参加型デモクラシー」
1.チェルノブィリという「人類規模の衝撃」
2.エートス・プロジェクト――汚染地での暮らし方、教えます
3.事故後管理の新たなパラダイム
4.そこに異議あり

第8章 原発大国フランスにおける「専門式デモクラシー」
1.ラ・アーグの白血病問題
2.旧ウラン鉱山の汚染問題
3.「グリーン」な核エネルギー vs 「脱核ネット」
4.欧州新型炉に関する公衆討議

第9章 ニジェールにおけるアレヴァのウラン事業
1.ニジェールの逆説
2.立ち上がったアーリット市民社会
3.CRIIRADと「シェルパ」の現地調査
4.フランスで論争が再燃
5.「アギル・インマン」と鉱山会社の間の緊張
6.「植民地化やめろ!」
7.排除されるニジェールの社会運動

終章

訳者あとがき
解説

【著者】セジン・トプシュ(Sezin Topçu)
科学史家・科学社会学者、国立学術研究センター(CNRS)研究員、社会科学高等研究院(EHESS)マルセル・モース研究所社会運動研究センター所員。ボスポラス大学卒業後、ストラスブール大学を経て、社会科学高等研究院(EHSS)で博士号取得。技術分野・医療分野におけるイノベーションの諸々の統治形態を研究テーマとする。とりわけ注目している現象が核エネルギー化および医療化、批判勢力として注目しているのが環境運動およびフェミニスト運動、研究対象とする国がフランスおよびトルコである。

【訳者】斎藤かぐみ(さいとう かぐみ)
Institut Européen des Hautes Études Internationales 修了(学位取得論文« Le droit de propriété intellectuelle. Les enjeux économiques et commerciaux de la technologie »)。株式会社東芝を退職後、『ル・モンド・ディプロマティーク』日本語版を創刊、2011年末まで発行人を務める。国際基督教大学Othmer記念科学教授職付き助手(STS担当、非常勤)を経て、フランス語講師(非常勤)。訳書に『力の論理を超えて』(共編訳/NTT出版/2003年)、オリヴィエ・ロワ著『現代中央アジア』(白水社/2007年)、アンヌ=マリ・ティエス著『国民アイデンティティの創造』(共訳/勁草書房/2013年)他。

【解説】神里達博(かみさと たつひろ)
東京大学工学部卒。東京大学大学院総合文化研究科博士課程満期退学。三菱化学生命科学研究所、科学技術振興機構、東大・阪大特任准教授などを経て、現在、千葉大学国際教養学部教授。朝日新聞客員論説委員、阪大客員教授等を兼任。博士(工学)、専門は科学史、科学技術社会論。著書に『食品リスク――BSEとモダニティ』(弘文堂/2005年)、『文明探偵の冒険――今は時代の節目なのか』(講談社現代新書/2015年)、『ブロックチェーンという世界革命』(河出書房新社/2019年)、共著に『没落する文明』(集英社新書/2012年)などがある。

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